門司港地ビール工房

06/10. 2010 up

門司港レトロエリアにオープンし、今年で13年目を迎える門司港地ビール工房の支配人”山下 悟 氏”に地ビール工房と門司港についてお話を伺いました。

ーそもそも、門司港 地ビール工房を立ち上げるきっかけとはなんだったのでしょうか。

山下 悟(以下 山下) このお店のオーナーでもある宮本が、海外で出会った一杯のビールから始まりました。ある年、北九州の姉妹都市であるアメリカのタコマ市を訪れた際、その古い港のマイクロブルワリー(小規模醸造所)で飲んだクラフトビール(地ビール)が格別にうまかった。そしてその美しい港湾都市と海峡のロケーションに魅了され、ぜひこの味を日本でも再現したい!と思い立ったのがきっかけです。

ーそれで、空・夕日・海が美しい門司港を選ばれたんですね。

山下 はい、もちろん建物にもこだわり、昭和50年前後に建てられた船舶用の倉庫だったものを使用しています。梁や出っ張りが多いのはそのなごりで、厨房や醸造所、エレベーターを作るのに大変苦労しました。レストランのテーブルや椅子は全て100年もののアンティーク家具で揃え、建物の雰囲気を壊さないよう、十分配慮しています。


門司港地ビール工房 1階レストラン

ーそして、門司港にお店をオープンされたと。

山下 1998年の4月に門司港 地ビール工房はオープンしたのですが、この年は、地ビールブームが収束し始めてきた時期で、地ビールはまずい、癖があって飲みにくい、甘いから料理と合わないなどのレッテルが張られ始めてきました。そして、400社以上あったマイクロブルワリーが半分以下に減るなか、なぜそのようなレッテルが貼られたのか、どうしたらうまい地ビールが作れるのか、どうしたら地ビールのよさがわかってもらえるのか、ひたすら全国のマイクロブルワリーを飲み歩き、検証を繰り返しました。

ー地ビール文化をけがしているー

山下 その中で見えてきたのは、単にブームに乗って地ビールを作っていたブルワリーがあまりにも多かった、という事でした。地ビールは出来立てが一番おいしいのですが、作って3ヶ月以上たったビールを平気で出していたり、味のブレが大きくておいしくないビールをだすブルワリーが何店舗もありました。そこにはビール一本で生きていくという強い思いが全く感じられず、地ビール文化をけがしている!!そのくやしい思いしかありませんでした。


ーそういった経験をどのようにビール作りに活かすようになったのでしょうか。

山下 私たちは地ビールの品質に徹底的にこだわっています。作ったビールに社内で評価点をつけ、一定の基準に達しないものは税務署を呼んで全て廃棄処分という厳しい約束のもと、
日々おいしいビール作りに励んでいます。ジョッキに残った飲み残しのビールを捨てるのも悲しいくらい、愛情をもって大切に作っています。そして料理にも力を入れ、オープン当初8割が出来合いだったものを今では2割まで減らし、ほとんどを手作りしています。コストはかかりますが、おいしい地ビールとおいしい料理で至福の時を過ごして頂きたいという思いから手作りにこだっわています。


生のラムチョップ

ーおすすめメニューを教えてください。

山下 全ておすすめですが(笑)中でもジンギスカンには特にこだわりを持っています。九州ではおそらく弊社だけだと思いますが、生のラムチョップをお召し上がり頂けます。ニュージーランドの食肉公社が設立した現地企業アンズコフーズの協力により、一度も冷凍することなく、新鮮な生のラム肉をお届けすることが可能となっています。それと熟練のピッツァ職人が作る窯焼ピッツァは生地にビール酵母が練り込まれいて、他では味わう事の出来ない甘みや食感を楽しむことができます。


門司港地ビール

ー今後、どのようなお店にしたいですか、またどのようなビールを作っていきたいですか。

山下 今、消費者がなかなかお金を出さない時代です。家でビールを飲んでいて、同じものをお店で高く飲むのには抵抗を感じてしまうと思うんです。ここでしか味わえない、おいしいビール・おいしい料理・上質な空間というものを提供し、付加価値を高め、お金を出す意味というものをお客様に感じて頂きたいと思っています。観光客の方はもちろんですが、地元の方が少し特別な時間を楽しんでもらえる上質な場所であることを目指しています。


ービールについてはどうでしょうか。

ーオンリーワンー

山下 今、挑戦中なのが、地ビールのオリジナルスタイルの確立です!ドイツを始めとするヨーロピアンスタイルの忠実なコピーから少しずつ離れ、作っていきたいのは門司港地ビールのオリジナルの味です。今まで培った経験やビールへの熱い思いを詰め込んだ、ここ門司港地ビール工房でしか味わう事の出来ないビールを作っていきたいと思っています。実は最近、品評会にビールを出品することをやめているのですが、それは品評会のやり方に物足りなさを感じているからです。なぜかと言いますと、このスタイルのこの部門の中で一番良いという評価の仕方に疑問を感じているからです。果たして、その細かい部門の中で評価されたビールをみんながみんな飲んで感動し、幸せになれるのだろうかと。私たちが疑問を持ちながら作っても、うまいビールは作れない。忠実なコピーは作れるけれど、うまいと感じるビールは作れないと思うんです。過去に4回賞はとっているのですが、そういった理由から現在、品評会への出品はやめています。今後は、ここ門司港でしか味わう事の出来ない感動するビールを作っていきます!

ー大変楽しみです。
それでは最後に...  門司港と地ビール工房への思いを聞かせください。

山下 門司港という土地は湯布院や黒川といった有名な九州の観光地に勝るとも劣らないポテンシャルを持った場所だと思っています。この門司港という観光地とともに門司港地ビールが人を引きつける観光資源となるように味に磨きをかけ、最高のビールを作っていきたいと思います。それと同時に地ビールがヨーロッパのように文化的な側面を持ち、地元の方の生活の一部として根付き、門司港地ビールが門司港の文化によって育まれ、後世に残っていく事を願っています。

ー門司港という場所が過去の文化的な姿を取り戻し、さらにそれを超えていく日もそう遠くないかもしれませんね。